佐藤 猛 神経内科顧問
(順天堂大学脳神経内科客員教授、 国立精神神経センター国府台病院名誉院長)
1. 原則
- 1. 患者のかけがえのない生涯の歴史を振り返って、人格、尊厳を思いやる。
- 親、あるいは夫婦として敬愛の気持ちを込めて接するよう、介護者の気持ちに余裕を持つようにする。
- 2. 介護者の人権、生活を出来るだけ維持できるよう工夫する。
- 介護者の苦痛、苦労を和らげる方法を関係者は一緒に考えてあげる。
- 一人で悩まないよう相談相手を見つける。
2. 現実と空想との取り違え、正常な判断が出来ない、短気で強情になる。
[ 症状 ]
- ● 食事を忘れ,何回も要求する。
- ● 過去の不愉快な出来事をくどくどと訴える。
- ● お金を盗られたと騒ぐ。
- ● 夜、知らない人が入ってきて、怖いと騒ぐ。
- ● 夕方、実家に帰ると身支度し、出掛けようとする。
[ 対応 ]
- ● 直ぐには否定しない。訴えの動機、背景(孤独・不安)をうかがう。
- ● 上手に話を合わせながら、話題を切り替える。
- ● 食事の要求が強い場合、お茶、少量のお菓子などで気持ちを落ち着かせる。
- ● お金が無くなっていないことで、安心させ、管理場所、記録など分かり易くする。
- ● 夜間の妄想、夕暮れ時の不安、徘徊などには抑肝散、少量のリスパダールを投与する。
- ● 叱らない、説得しない。
[ 禁句 ]
- 「そんな馬鹿なことあるはずないでしょう」、「ダメじゃない」
- 「何度いったら分かるの」、「何でこんなことをするの」
3. 主な事例
- アルツハイマー病:85歳女性と息子さんとの会話
- 女性:「今日、デイに行っていたら公園で子供が大勢、魚釣りをしていたよ。」
- 息子:「そうかい、そうかい。沢山、魚が釣れていたかい」
- (参考になること)
- 息子さんはいきなり否定しないで、上手に話を合わせ、患者さん(母親)との会話を
- 続けるようにしている。