普段から慢性に咳や痰が出て、階段で息切れあり、風邪をひくと治りにくく、息苦しさを感じるなどの症状が気になる方はおられませんか。

慢性の咳、痰、呼吸苦等の症状は肺や気管支の疾患だけでなく様々な疾患の一症状として生じますが、今回はこれらの症状を来たす代表的な呼吸器病で『慢性閉塞性呼吸器疾患』と呼ばれる一連の疾患群についてお話します。

この疾患群は慢性気管支炎、肺気腫、びまん性汎細気管支炎、慢性型気管支喘息の4疾患よりなり、それぞれ病態の成り立ちは異なっていますが、病気を進行させる因子や症状、治療法に共通した点が多く、一群の疾患として扱われています。『閉塞性』とは肺や気管支の弾力が失われ、息が吐きにくくなったり、痰が排出しにくくなる病態を意味します。

たとえれば肺は柔らかく、きめの細かい、弾力に富んだスポンジのような臓器ですが、病状が進行するとしだいに入浴用のへちまのように、硬く、めの粗い、弾力の低下した状態になり、その結果として、血液中へ酸素を取り込む能力が低下することにより呼吸苦を生じたり、慢性の炎症によって気管支粘膜から多量に分泌された痰が排出されず貯留し、細菌感染を助長し繰り返すことにより多彩な呼吸器症状が現われ、それがさらに病状を進行させるという悪循環に陥った状態となります。

慢性閉塞性障害の状態であるか否かは症状、レントゲン検査、呼吸機能検査等により診断されますが、同時に、肺癌、肺結核、心不全等々他の疾患でないかを調べる必要があります。医師によく相談して下さい。閉塞性障害を引き起こし助長する因子として、喫煙、大気汚染、ガス・粉塵の吸入、空調の不備や気象条件による低温・低湿、感冒、低栄養、不摂生、ストレス、運動不足、飲酒等があります。

病的に変化してしまった肺は、もとにはもどりません。

治療法として最も大切なことは、上記の因子を出来るだけ避け、病状の進行をくいとめることに尽きます。特に普段から排痰を心掛け風邪をひかぬこと、ひいたら早めに医師を訪れ治療し気管支炎や肺炎を予防し呼吸不全に陥らぬようにすることが大切です。

内服薬としては、排痰促進剤、気管支拡張剤、坑生物質、鎮咳剤、消炎剤等を病状に応じて使用します。