慢性的に繰り返す胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療法として、健康保険診療でのピロリ菌の除菌療法が始まりました。

潰瘍の原因として、従来から酒・タバコ・ストレス等の要因が言われてきましたが、それらに加え、近年の研究から『ヘリコバクター・ピロリ』という細菌が、長年に渡り胃粘膜に生息し、胃や十二指腸に慢性的な潰瘍や炎症を引き起こす主要因となっていることが究明され、潰瘍がストレス病から感染症として取り扱われるようになったからです。

現在、わが国の40歳以上の方に80%前後もの高率でピロリ菌感染が認められています。

これはピロリ菌が幼小児期に飲み水等から感染し胃に生息し始めることから、子供の頃上下水道の整備が充分でなかった世代に多いと考えられています。

もちろん感染者すべてが潰瘍を起こすわけではありません。酒・タバコ・ストレス等のその他の要因も複合的に絡み合い発症すると推察されます。

すべての感染者に除菌が必要という訳ではなく、実際に胃潰瘍や・十二指腸潰瘍を起こしている方が除菌対象となります。

感染の有無は、内視鏡で直接胃粘膜から菌を採取したり、血液中の抗体価やピロリ菌が検査用の薬に反応し生じる呼気中のガスを測定したりして判定します。

除菌は7日間抗生物質2種類と胃酸を抑える薬を飲みます。

副作用には下痢、味覚異常、肝障害等がありますが、重篤で治療を中断せざるを得ない例は稀です。

除菌の成功率は90%程度で、完全ではありませんが大部分の潰瘍の再発が抑制されます。また慢性胃炎も改善され、胃炎との関連が深いとされる胃癌の発生率も結果的に低下するのではと期待され、さらに研究が進んでいます。

詳しくは胃腸科や消化器科の医師にご相談下さい。